名香「大伽羅」

四代・和佐吉

2011年05月27日 13:42

先日(5月22日)の徳川美術館での「名香鑑賞会」で聞くことのできた名香三種の内のひとつ、名香「大伽羅」をご紹介します。
写真撮影は許されませんでしたので、ブログの写真は平成8年の徳川美術館での「香の文化」展の図録のものです。
名香「中川」「一声」に続いて、最後に「御西(ごさい)天皇」勅名の、名香「大伽羅(おおぎゃら)」(木所:伽羅)を鑑賞しました。九条家に伝来したと云われる物だそうです。

我々3名は、第一席に入れたものの、ぎりぎりだったため、「お末(つめ)」の席だったのですが、志野流香道家元のお話が大変良く聞こえる席で、また流れるようなお手前を目前で拝見することが出来たのは幸運でした。
香を聞く前の家元のお話によると、香木の銘は様々なものがあるけれども、「伽羅」に「・・・伽羅」と名づけるのは大変珍しいといいます。

さて、出香です。やっと気持ちも落ち着いてきました。
・・・なんという香りでしょう。甘く、辛く、幽玄な、味わい深い香りが、・・・大きな波が押し寄せてくる如く迫ってきました。伽羅中の伽羅、そんな香りです。
御西天皇が、なんの捻りもなく、ただただ「大・・・伽羅」と名付けた気持ちがわかったような気がします。ほんとうに「幸せになる」香りを味わうことが出来ました。
「道具飾席」で拝見した本体は、名前の通り伽羅としては大きいもの。写真は、アングルの関係でそれほど大きくは見えませんが、名香「中川」の2倍ほどでしょうか。手のひらいっぱいに乗る位の大きさと記憶しています。
「香の文化」展図録の図版解説によると76.0gということです。
また、特徴的だったのは、切り口に砥粉(とのこ)のようなもので養生してあったこと。油分でべたつくのを抑えたのか・・・珍しい処理です。その上に、香銘が明記してあります。

「御西天皇」は「歴代天皇総覧(笠原英彦著)」によると「第百十一代・1637~1685(在位:1654~1663)・後水尾天皇の第八皇子として寛永14年(1637)に生誕した。(中略)寛文3年(1663)、識仁親王に譲位するまで、およそ10年にわたり皇位にあったが、もっぱら学問に力を注ぎ、『水日集』などのすぐれた著作を次々と著した。(中略)和歌の才に恵まれ、古典への造詣も深かった。だが、治世中には明暦の大火をはじめ(中略)忌まわしい出来事が続発(中略)一方、天皇は朝廷の諸記録の複製を進めて火災に備えるなど(中略)功績も見られる。(中略)月輪陵(つきのわのみささぎ・京都市東山区今熊野)に葬られた。」ということ。大変なインテリでいらっしゃったようです。

そんな第111代天皇が愛した香木の香りを、三百数十年の年月を越えて体験できたことに途方もないロマンを感じると共に、これらの香木を最良の状態で保存して下さっている尾張徳川家に対し感謝するばかりです。


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