名香「一声」
先日(5月22日)の徳川美術館での「名香鑑賞会」で聞くことのできた名香三種の内のひとつ、名香「一声(ひとこえ)」をご紹介します。
写真撮影は許されませんでしたので、ブログの写真は平成8年の徳川美術館での「香の文化」展の図録のものです。
名香「中川」に続いて、二度目に「二百種名香」の内の一つ、名香「一声」(木所:真南賀)を鑑賞しました。
香を聞く前の志野流香道家元のお話によると、「一声」と名づけられた「香」は、大変多く存在するそうです。
出典は「いきやらて 山路くらしつ ほとときす 今一こえの きかまほしさに」(「拾遺和歌集」巻第二・夏 源気公忠朝臣)の歌。
意味は「山路で思いがけずほととぎすの鳴き声を聞いたので、もう一度聞きたいと思って、去り難く行き過ぎないでいたところ、とうとう一日を過ごしてしまった。」ということ。(参考:「香道の作法と組香」)
その、数ある「一声」の中でも、名香の呼び声高いのが今回の「香」。
「香の文化」展図録の図版解説によると「この香木は尾張徳川家二代光友が「一声」と命名している。証歌として自筆の詠草がある。・・・一こゑと なはことことしく 聞ゆれと にほひはさせる ことはなきと思ふ」ということ。
つまり、二つの証歌を持つ「香」ということです。
さて、出香です。両手で、しっかりと香炉を扱います。
すっきりしたといいましょうか、軽やかといいましょうか・・・そう、涼しげな香りです。
暖かな香炉を手にしながら、・・・不思議な感覚でした。
「道具飾席」で本体を拝見すると、「中川」の4倍くらいの大きさでしょうか、大きな物です。
「香りの文化」展の図録によると重さは128.6gということ。(これも、若干、減ってしまいましたが・・・)
香木の脇には、光友公直筆の詠草が添えられていました。
関連記事